大会アピール 2022年8月7日
大会アピール
3年間にも及ぶ新型コロナウイルス感染症の影響。今も激しく続けられるウクライナでの戦争。そして、各地で引き起こされる自然災害。障害のある人びとのいのちと権利保障をめぐる歴史的な危機が続くなか、全国障害者問題研究会は、2022年8月6日、7日の2日間、第56回全国大会(兵庫2022)を開催しました。
障害のある人びとの権利保障のうねりを生み出してきた開催地・兵庫のとりくみは、全国の実践や運動を大いに励ましてきました。30年前、「花ひらけ15の春」を掲げて、養護学校の高等部全入を求めた「ひゅうまん・ぼいす」の運動は、本人と親の熱いねがいを要に全県のとりくみへと広がり、高い壁をうち破って障害のある青年たちに後期中等教育への扉をひらきました。こうして無数の人びとの悲しみとねがいを刻んできた発達保障のバトンを受けとろうとする人の輪は、今、確かに広がっています。
記念講演と特別報告を通して、人びとの暮らしを破壊し無数のいのちをうばい去る戦争、そして、障害や病気のある人のいのちの始まりとつながりを断ち切ろうとする優生思想は、国家や社会に役立つかどうかで人間をふるいにかけるという点で深くつながっていることを学びました。そして、平和と人権をねがう世界中の人びとと手を結んで、力強くあゆんでいきたいとの思いを新たにしました。子どもたちやなかまたち、そして家族のささやかなねがいを「かるた」に込めて分かち合おうとした文化交流企画では、障害のある人びとが自らのライフステージにふさわしく生活の質を高めていくことが、すべての人のいのちと権利が守られる社会の実現に向かう、ゆっくりではあっても確かなすじ道であることをユーモアたっぷりに示しました。
兵庫の発達保障のあゆみからつむぎ出された「久しぶりに話そうや、私たちのねがい」という大会テーマは、わたしたちの内に湧き起こるねがいであるとともに、暴力の連鎖を断ちきり、社会の分断を乗りこえるために欠かすことのできない対話と連帯を呼びかけるものです。分科会の討論では、惻々と胸をうつねがいが綴られたレポートをもとに、それぞれの実態を持ち寄り、実践を語り合うことで、ねがいが明らかとなり、そのねがいを束ねてみんなで共同することが、具体的な制度の改善につながることを学びました。
戦争と障害のある人びとの幸福は絶対に両立しません。わたしたちは「戦争をする国づくり」をすすめる憲法改悪を許さず、すべての人の発達が花ひらく平和な社会を、未来に生きる人たちに手渡していきたいとねがっています。「私たち抜きに私たちのことを決めるな」という理念の下で具体化された障害者権利条約は、一人ひとりのねがいを聴き合い、語り合うことが、人権保障の礎になるという発達保障の研究運動が大切にしてきた思想を国際的な理念に押し上げました。このことに確信を持ちたいと思います。
身近な地域や職場で、ともにねがいや悩みを語り合い、日々の暮らしや実践をゆたかにするために譲れないものは何か、新たにつくり出すべきものは何かを明らかにしていきましょう。そこに多くの人を誘いあって参加し、語り合いと学び合いの輪を大きく広げていきましょう。日本国憲法が社会の隅々をあかるく照らし、障害者権利条約が確かに生きる輝かしい未来にむけて、発達保障の道をともに切りひらいていきましょう。
2022年8月7日
全国障害者問題研究会 第56回全国大会(兵庫2022)
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