みんなの声が動かす 選挙のバリアフリー 総務省が大規模実態調査

みんなの声が総務省を動かす!
投票のバリアフリーで総務省が大規模調査を実施しています

以下は、12月17日の朝のNHK「お早う日本」で流れたニュースです。


障害のある人の投票環境 初めての大規模調査 総務省
2022年12月17日

体や心に障害のある人にとって選挙の際、投票所に行って一票を投じることは必ずしも簡単なことではありません。こうした現状を改善しようと総務省は、全国各地の選挙管理委員会を対象に投票しやすい環境をどう整えているかなどを尋ねる初めての大規模調査を始めました。

障害のある人の投票環境をめぐっては、障害者団体などでつくるNPO法人、日本障害者協議会がことし5月、投票環境の改善を求める要請書を総務大臣あてに提出しました。

要請書では投票所への移動の支援や、投票所のバリアフリー化の徹底、投票先を選ぶための十分な情報提供などを求めています。

こうした動きを受けて、総務省は来年春の統一地方選挙に向けて、全国各地の選挙管理委員会を対象に、投票しやすい環境をどう整えているかなどを尋ねる初めての大規模調査を始めました。

調査では、投票所に派遣する職員に研修を行っているかやマニュアルを作成しているか、投票所で行っている具体的な工夫などについて質問しています。

総務省では、集まった回答をもとに効果を上げている先進的な事例をホームページに公開するなどして、投票しやすい環境づくりにつなげたいとしています。

NHKではことし夏の参議院選挙に先立って「みんなの選挙」という特設サイトを立ち上げ、投票所で障害のある人が受けられる具体的な支援策や各地の取り組みなどを発信しているほか、当事者などからの意見を募集しています。

障害者団体「障害のある人の参政権守られるよう期待」
総務省の大規模調査について日本障害者協議会は、「自治体によって投票所での対応に格差があり、支援が必要だといった声が数多く寄せられている。障害のある人の参政権がきちんと守られるよう、現状の改善につながる調査になることを期待しています」とコメントしています。


NHK「みんなの選挙」(役立つ情報満載の意欲的なプロジェクトのサイトです)

▶JD 要請書「障害者の投票行為における合理的配慮を欠く問題事例の改善を」(PDF)

資料「投票における合理的配慮を欠く問題事例の改善を求める201の事例・要望集」
PDF版
テキスト版

「みんなのねがい」ニュースナビ=バリアフリー投票を求める運動(PDF)


◆参考資料 障害者権利条約 日本政府への総括所見(勧告)
仮訳政治的および公的な活動への参加(第29条)
61.委員会は、懸念をもって次のことに留意している。
(a)障害者の多様性に応じた、投票手続き、施設、資料へのアクセシビリテイが制限されており、また選挙関連情報が不十分であること。
(b)特に障害のある女性にとって、政治生活や行政に参加し、議員となり、公的な機能を果たす上での障壁。

62.委員会は、締約国に次のことを勧告する。
(a)公職選挙法を改正し、選挙放送やキャンペーンなどの選挙関連情報の配慮とともに、投票手続き、施設、資料が、すべての障害者にとって適切でアクセスしやすく、理解しやすく使いやすいものにすること。
(b)障害者、特に障害のある女性の政治生活および行政への参加が促進され、支援機器や新しい技術の使用を促進し、パーソナル・アシスタンス(個別の支援)を提供することによって、あらゆるレベルの政府で効果的に役職に就き、あらゆる公的機能を果たすことができるようにすること。


以下は、こうした動きのはじまりとなったJD(日本障害者協議会)からのよびかけです 


JDでは、障害のある人の投票に関して、先の衆院選でもみられた合理的配慮を欠く事例は、国民に等しく保障された参政権を侵し、障害者権利条約第29条(政治的及び公的活動への参加)実現の妨げにつながる重大な問題であるととらえ、問題の改善を国や自治体などに求めていきたいと考えています。国選・地方選での投票における合理的配慮を欠く事例(体験)やご要望を募っています。専用のフォームよりお寄せください。


投票における合理的配慮を欠く問題事例の改善を求めるとりくみにご協力ください
 日本障害者協議会(JD)代表 藤井克徳

 2021年10月の衆議院選挙では、投票率は56%と低く、そのうち期日前投票数は約19%にあたる2000万人を越えています。いうまでもなく、投票はきわめて重要な政治参加の権利ですが、障害のある人びとへの合理的配慮を欠く事例が寄せられています。すべての投票において、合理的配慮の提供を欠くという差別は許されません。これは障害者権利条約(第29条 政治的及び公的活動への参加)に反し、その実現を妨げるものです。

 私たちは、投票における合理的配慮を欠く問題事例を寄せ合い、それを整理し、問題を改善するよう国や自治体などに要請したいと考えます。ぜひ、多くのみなさんにこのとりくみのご賛同をいただき、投票における合理的配慮を欠く問題事例や改善要望をお寄せください。

つぎの専用フォームをご利用いただき、
問題と思われる事例やご要望を、2022年2月末日までにお寄せください。
 https://forms.gle/t6GbpT4m8QWMugXv6

または、以下の内容をメールにて事務局にお寄せください。
①メールアドレス、②お名前、③所属団体名または「個人」、④障害の有・無、
⑤1)情報に関連する問題事例、ご意見/2)投票所の環境などに関連する問題事例、ご意見/3)投票方法、投票用紙などに関連する問題事例、ご意見/4)その他の問題

担当事務局=薗部英夫(JD副代表)、白沢仁(JD理事)、内田邦子(JD理事)、山本忠(立命館大学法学部教授)
連絡先=日本障害者協議会(JD) メール:office@jdnet.gr.jp TEL:03-5287-2346

現在寄せられている問題事例や改善要望など
1)情報のバリアフリー
○「期日前」がはじまっているのに「選挙公報」が届かない。「裁判官国民審査」の「公報」はじめ、「期日前投票所」には電子データでの提供含め「選挙公報」を掲示して欲しい。
○選挙公報・選挙通知を点字版・音声版・拡大版、デジタル版、ルビふり版で提供して欲しい。入院・入所中の障害者にも確実に届けて欲しい。
○知的障害のある人へのわかりやすい「選挙公報」が欲しい。

2)投票所の環境などに関するバリアフリー
○低床の投票記載台で「イスに座って記入したい」と希望しても「車いす専用です」と断られた。投票用紙に安心して記入できる場所を確保して欲しい。
○カラーユニバーサルデザインに基づく投票箱の色分けや誘導矢印表示が欲しい。

3)投票方法、投票用紙などに関するバリアフリー
○原則自書のみとする公職選挙法第46条が、自書の困難な障害者の投票権の行使を妨げている。
○「裁判官国民審査」用紙のマス目はめちゃくちゃ狭く、不随運動がある人には記入困難。
○視覚障害者は、審査で×をつける場合は、一人一人の裁判官の名前を、自らが点字で打ち、バツ(×)を打つ。投票方法を改善して欲しい。
○代理投票について、補助者を投票所事務員に限定する公職選挙法が、通訳介助者を介して自らの意思を伝える必要がある盲ろう者や、自らの意思を家族・支援者に対してであれば伝えられる障害者の投票権の行使を妨げている。自らが選んだ同伴者による代理投票を実現して欲しい。

4)その他の問題
○フィンランドではすべての病院で投票をやらなければならないという法がある。より身近な場所でもできるように施設・病院等に移動投票所を開設して欲しい。
○「筋ジス病棟で暮らしてます。期日前投票を代理投票で投票しました。代理記載人の管理課員に、指さししてもらって投票しました。立会人には投票内容が知られないようにするためカーテンの外で立ち会ってもらいました。他所ではどうしているか知りたいです」(大分・筋ジス患者)。
○障害者手帳取得が非常に困難で、障害者総合支援法の対象にもなっていない難病の人には、投票所まで歩いて行くことができなくても車いすは支給されず、期日前投票することもできない人がたくさんいる。改善して欲しい(筋痛性脳脊髄炎の会)

◆参考資料 障害者権利条約第29条 政治的及び公的活動への参加
 締約国は、障害者に対して政治的権利を保障し、及び他の者との平等を基礎としてこ
の権利を享受する機会を保障するものとし、次のことを約束する。
(a)特に次のことを行うことにより、障害者が、直接に、又は自由に選んだ代表者を通
じて、他の者との平等を基礎として、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加する
ことができること(障害者が投票し、及び選挙される権利及び機会を含む。)を確保す
ること。
(i)投票の手続、設備及び資料が適当な及び利用しやすいものであり、並びにその理解
及び使用が容易であることを確保すること。


◆参考資料 障害者権利条約 日本政府への総括所見(勧告) 仮訳
政治的および公的な活動への参加(第29条)

61.委員会は、懸念をもって次のことに留意している。
(a)障害者の多様性に応じた、投票手続き、施設、資料へのアクセシビリテイが制限されており、また選挙関連情報が不十分であること。
(b)特に障害のある女性にとって、政治生活や行政に参加し、議員となり、公的な機能を果たす上での障壁。

62.委員会は、締約国に次のことを勧告する。
(a)公職選挙法を改正し、選挙放送やキャンペーンなどの選挙関連情報の配慮とともに、投票手続き、施設、資料が、すべての障害者にとって適切でアクセスしやすく、理解しやすく使いやすいものにすること。
(b)障害者、特に障害のある女性の政治生活および行政への参加が促進され、支援機器や新しい技術の使用を促進し、パーソナル・アシスタンス(個別の支援)を提供することによって、あらゆるレベルの政府で効果的に役職に就き、あらゆる公的機能を果たすことができるようにすること。


◆参考資料「みんなのねがい」リレー連載「障害者権利条約の最前線」
「みんなのねがい」2020年4月号~2021年3月号

第1回=人権の発展と障害者権利条約/中村尚子(全障研副委員長)
第2回=権利条約のいまの到達点/薗部英夫(全障研副委員長・JD副代表)
第9回=アクセシビリティ(accessibility)は条約の”肝”/薗部英夫(全障研副委員長・JD副代表)
第11回=人権水準の評価と向上に向けて/中村尚子(全障研副委員長)
最終回=パラレポⅡの意義と今後の焦点/薗部英夫(全障研副委員長・JD副代表)
2022年12月27日